小牧市中央図書館

小牧市中央図書館(新居千秋都市建築設計)

―多様な居場所が散りばめられたサードプレイスー
小牧市中央図書館は、市の中心市街地である名鉄小牧駅に位置する50万冊の蔵書を誇る約8700㎡の滞在型図書館である。名鉄で唯一の地下駅である小牧駅の周辺は、桃花台線が廃線された影響もあり賑わいが少ない状況であった。さらに、駅前に緑が少なく、計画地と駅が階段の歩道橋で分断されていた。この建物が駅前に建設されることで、周辺エリアも活性化し、駅前の賑わいを取り戻すことが本プロジェクトの役割である。
我々は地域の象徴でもある「小牧山」を手掛かりに、駅前に「小さな小牧山」を創ることで、緑溢れる景観を創出し、市民が自由に過ごせる居場所をつくることを目指した。小牧山のように段々状にセットバックされた建物には、テラスや緑化、多様な居場所が点在している。そして「商業開発依存型の街づくり」から「市民が生きがいを感じられる街づくり」への転換を目指した。

この建物の構成としては大きく3つのゾーンから成り立っているのが特徴である。1つ目ゾーンは、敷地南側を通るシンボルロード(小牧駅から小牧山に通ずる道路)と敷地北側のイベント会場にもなる歩行者専用道路を、建物中央で南北につなぐ賑わい軸である。そしてその賑わい軸の上部に、各階が連続的に繋がる4層の吹抜空間を配した。賑わい軸に連続するようにカフェやラウンジ、総合案内を配している。また壁面書架で囲まれた吹抜空間の周囲には学習室を点在させた。2つ目のゾーンは賑わい軸の西側の無柱で矩形の開架スペースエリアである。機能性も重視した排架しやすいエリアで、建物の中では少し静的なエリアに位置付けられる。3つ目のゾーンは賑わい軸の東側の動的なエリアである。多目的に利用できるイベントスペースやそれと連続する外部のイベント広場、読書もできる緑に溢れたテラス空間などを設けている。

一見複雑な空間に感じるが、明快な構成とし各エリアにそれぞれの特性を与えることで、多様な居場所を創出しながらも、図書館としての機能性を確保している。この図書館は見る角度や方向によって多様な視線の抜けが突如として現れ、複雑なシーンが連続する。本との出会いを楽しみながら散策できる場所となっている。ハイサイドライトからの自然光に満たされた吹抜から見下ろすと、館内の約700の席で各々が自由に過ごす様子が、同時多発的に垣間見え、実に多様性に富んだ居場所となっている。またBDSのセキュリティラインを最大限に拡張し、バルコニーテラスも含めて館内全域に本を持ち出せるのも特徴である。

児童のエリアにおいては、絵本のストーリーに合わせて家具の色や空間のイメージを創り、子ども達が楽しんで本と触れ合える場とした。
自由に散策して楽しみながら本と出会う、そして多様な居場所から自分がとびきり心地よいサードプレイスを見つけられる、そんな図書館になっていくことを期待している。

所在地 愛知県小牧市
竣工 2020年12月
用途 公共施設
構造・規模 鉄骨造 一部 鉄筋コンクリート造(地下SRC)
延床面積 8,703㎡
施工 鴻池・三喜特定建設工事共同企業体
家具造作 末永製作所
Photo 彦坂武徳

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